【君が見た景色】
君は僕よりずっと小さかった
いつも僕を見上げていた
棚の上にある赤い箱も
本棚の最上段にある分厚い辞書も
僕にはすぐに確かめられるけれど
君からは見えなかっただろう
君には高くて届かないものがいっぱいあったし
僕に頼まないとできないこともあったが
僕はそんな君がかわいくて大好きだった
だけど僕には見えていないものがあった
君はいつも僕が
自分のことを見下してくるのが嫌だと言った
僕にそんなつもりはなかった
だけど
君からしてみれば
いつもしてやっているという態度を取られたり
高いところに手が届かないのを見て笑われたり
その繰り返しが苦痛だったらしい
納得できなかったが、君に言われるまま別れた
肩を落とし、膝を押さえて項垂れて
偶然にも君の背と同じくらいの高さになったことに気付き
ふと顔を上げる
棚の一番上、置いてあった赤い箱が見えた
8/14/2025, 11:16:59 AM