「お前は神使としては不適合である」
そう遥か天上から降ってきた言葉を認識出来た時には
浮遊感と身体中に風を感じて下へ落下していることに
気がついた。
ものすごい風圧に瞑った目をなんとか開ければ
眼下に広がる人の街並み
地上へと落とされたのだ。
慌てて背の翼を動かそうとするがうまくいかない。
必死に踠くうちに視界に入って初めて己の白い翼が
黒く変色していっている事に気がつく。
それにショックを受けるが呆けていれば待っているのは死だ。
羽ばたく事は出来ないが翼を広げることにはどうにか成功し、高いビルが並ぶ街の上空を滑空する。
落とされた時には日が沈む間際だったため地上付近にまで落下した頃には空は暗くなっていた。
ようやくスピードが落ちて無様だが一際高いビルの屋上へと不時着した。
ドガシャァンとものすごい音と共に。
「うぉっ!?!?なに!?!?」
人間の声がしてどうやら屋上に人が居たようだ。
正直不時着のショックと堕天ショックで立ち上がることも出来ないが人には己の姿は見えない筈なので放っておいても大丈夫だろう。
「えっ!?!?!?人!?いや翼ある!?!?天使!?」
大丈夫ではないようだ。
「えっ、…と???い、生きてる…??」
「………私が、見えるのか?」
「喋った!?、生きてる…み、見えてますけど??」
堕天するともしかして人間に見えるのか????
「あ、あの~…大丈夫ですか????」
「…大丈夫に見えるのか?」
「見えないっスね…すみません」
あきらかに人ではない己によくもまぁ話かけるなこの人間。
「…と、とりあえず、救急箱取ってきますね…?」
そういって屋上入り口らしいドアから
下りて行った人間にまぁ戻ってくる事はないだろうと
意識を手放した。
それがまさか律儀に戻ってきて己を手当てし、
衣食住を提供する代わりに
自身の経営するバーで堕天使の己を働かせるなどとは
想像も出来なかった。
今では堕天使の居るバーとしてひそかに人気を博しているらしい。(客はコスプレだと思っているが)
今や神使であった事などどうでもよく、店長である己を拾った人間の無駄な出費をどうやってやめさせるかを考える事の方が重要になってる事に堕天使は笑った。
店長:一際高いビルの持ち主、最上階フロアに住んでいる。堕天使拾ってバーで働かせる変な人。
堕天使:実際には罪など犯してないものの疑いの余地があったせいで罪を全て被せられ追放された。少し変わった天使だったので周りからは浮いていた。
6/18/2023, 10:40:57 AM