すゞめ

Open App

『君を照らす月』

====================
いつもありがとうございます。
露出が多いです。

苦手な方は「次の作品」をポチッとして自衛をお願いします。
====================

 月明かりをカーテンで遮光して、彼女という存在を独占する。
 陽だまりを集めたシーツの上で横たわる彼女の姿は、天使と見紛うほどに神秘的だ。

「愛しています」

 生理的に溢れていく涙の筋を拭って囁く。
 熱で揺蕩う瑠璃色の瞳は純度の高い透明の膜が張り、常夜灯の仄暗い光を反射させた。

「す、き……っ」

 意地っ張りな彼女が素直になる瞬間は、いつだって幸福感に満たされる。

 必然的に顔を寄せ、唇を重ねた。
 互いの熱が伝播し合い、息ができなくなるまで深く潜っていく。

 色数の少なくなった寝室で、蠱惑的な美しさを醸し出す彼女に俺は翻弄されるばかりだった。

   *

 小さなベッドで彼女への愛を捧げたあと、ミネラルウォーターを取りに一度、寝室を出た。
 壁側に向かって毛布にくるまっている彼女にそっと声をかける。

「水、持ってきましたよ」
「……んー」

 体を動かすが起き上がる気力はないのか、彼女は微睡んだ調子で曖昧な返事をするのみだった。

「ひと口でいいですから、ね?」

 だから、起きてください。

 そう声をかけるつもりで、毛布をそっと取り除いて彼女の肩に手を添えたときだ。

「ひぁんっ」
「えぉっ!?」

 艶のある声が寝室に響き、つられて俺も間の抜けた声をあげる。

 は?
 なんだ今のかわいい声は?

 ついでに今、彼女はどんな表情をしているのか。
 落ち着かない雰囲気のなか、顔を覗き込もうと体重をかけるとベッドのスプリングが軋んだ。

「ごめん」

 俺の気配を悟った彼女が小さく言葉を溢す。

「でも。今、は、ちょっと……。触らないで……」

 余熱を逃がそうと小さくくるまっている彼女の耳は赤い。
 いたたまれなさからか、毛布を引っ張り上げて顔まで埋めてしまった。

「わかりましたから。とりあえず声枯れちゃうんで、水分は取ってください」

 小さくうなずいたあと、気怠そうに体を起こした彼女に、水の入ったペットボトルを手渡す。

 素肌を毛布で隠すが、浅く上下する背中は無防備にさらされていた。
 肩甲骨の影が織りなす陰影に目を奪われたが、ペットボトルのキャップが小気味のいい音を立てて我にかえる。

 ミネラルウォーターが傾いたペットボトルの重力に従い、緩慢な流れで彼女の口腔に移ろいでいった。
 たぽたぽと小さな水音が心地よく耳に響く。
 2、3口、水を含ませたあと彼女はペットボトルのキャップを閉めた。

「ありがと」
「どういたしまして」

 彼女の手先に触れないようにしながら、ペットボトルを受け取り、ベッドボードに置く。
 潤いを帯びた唇が、常夜灯で艶美に照らされた。

 シャツを羽織ったあと、再び背を向けて横たわる彼女の隣に俺も潜り込む。
 刺激を与えないように静かに腕を回したが、彼女の体は小さく震えて強張りを見せた。

「体、つらくないですか?」
「へ、……き」

 腹に回した俺の手を取って、指を絡めて遊ばせる。
 まだ熱を残す彼女の指先に、ゾワッと背筋が落ちつかなくなった。

「こっち、向いてくれませんか?」
「え、なんで……」
「最後に、キスだけさせてください」

 彼女の絡めている指に緊張感が纏い、躊躇いがちに震えた。
 その指を捉えて、今度は俺が撫でる。

「1回だけ。お願いします」
「……う」

 おずおずと振り返った彼女の唇を、ゆっくりとさらった。

11/16/2025, 11:51:04 PM