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急に寒くなったなー。

カイロ、持ってくればよかった。

そんなことを思いながら、俺は大学に向かう。

「ふぁーあ、おはよぉ…」

横からふにゃりとした、眠そうな声が聞こえてきた。

「ああ、おはよう、あまね。」

ふわふわしたミルクティー色の髪をわしゃわしゃと撫でてやると、ふへへ、と嬉しそうに笑った。

「もうすぐクリスマスだねぇ。」

と、あまねが白い息を吐きながら諦めたような声で言った。

「ああ、そうだな。」

「はあ、いいよな、お前は。どうせ今年も彼女と過ごすんだろ?」

「ああ。」

「いーなー俺も彼女ほしー…」

「あまね顔は可愛いんだからすぐできるだろ。」

「顔はってなんだよ!てゆうかそれ、彼女いない歴=年齢のやつに言う??それで付き合えるならもうとっくに彼女いるはずじゃん…」

「…まあ、頑張れ。」

そんな他愛ない話をしている間に大学の教室に着いた。

「一限は…歴史か。」

「うわ、ほんとじゃん!うげー。」

あまねが嫌そうな声をあげると、教授が入ってきた。

「…おやすみ。」

「寝るな寝るな。また全員に寝起き晒すことになるぞ」

「いーもん。」

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そんなこんなで一日が過ぎ、家に帰る。

…クリスマス。

「もう、そんな時期か…」

俺はつい頬が緩んだ。

「早く会いたいなあ。」

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クリスマスの夜。

俺は外にある冷凍室から大きな白い棺を取りだした。

冬にしか会えないのは誤算だったなあ。

そう思いながらそれを部屋の床に丁寧に置き、蓋を開ける。

中には俺の彼女が入っている。

真っ白な肌。

そのまわりに咲き乱れる無数の真っ赤な薔薇。

まるで、おとぎ話に出てくる白雪姫のように綺麗だ。

ただし、それは救われなかった白雪姫。

俺という魔法使いに二度ととけない魔法をかけられてしまった。

死ぬまで大切にするよ。

勿論、死んだ後も。

彼女の真っ白いひんやりとした頬を触りながら呟いた。

「ずっと一緒にいようね。」


           2023/12.18 冬は一緒に






12/18/2023, 11:29:16 AM