僕には、今までの不行跡や背徳が、教師になった親友と言う形を取って制裁に訪れたような気がしていた。
「飲みなよ。冷めてしまうから。」
友人は珈琲を啜って、僕を上目で見た。僕はぎこちなく頷いてカップを口に運んだ。味がしなかった。
「……君に声をかけたのは」
彼は緩慢に言った。
「ただ、懐かしさのためだよ。だから固くならないでおくれ。責めようなんて気持ちじゃあないんだ。」
「嘘つけ。」
「嘘だと思う?」
僕は彼に酷い罪悪感を覚えてはいたけれど、一方で酷くその性情を憎んでいた。会話を重ねるごとに、過去の僕らの粘着質な談笑ひとつひとつが鮮やかに蘇ってくるようであった。そうだ、一度なだめて許して、それから穿り返すのが彼の常套だったなと僕は思った。そんな記憶さえ、忌々しさや青臭い己への悔いの思いより先に、懐かしいと感じてしまった老いた自分が一等恐ろしい。
「わたしはね、君のことを今でも友だちだと思っているし、愛を持って接したいと思っているよ。」
ーーー愛?
僕は彼を強く睨め付けた。案の定やつは薄笑いをしていた。芒色の肌や、中性的な腰つき、一重、黒々とした眸。それら全て学生の頃から変わっていない。けれど、彼はもう大人だった。先生だった。愛という言葉をぱっと口に出せるあたり、彼にとって僕のことはもう取るに足らない昔に過ぎなくて、成人として成熟した彼から見て幼い矮小な僕は随分蔑まれているに違いない。
悲しむべき厚い壁が僕らを明らかに隔ててしまった。
「まあ、お聞きよ。珈琲を飲み終わるまではさ。」
9/27/2025, 2:56:53 AM