ガルシア

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 貴方が私を好きになること、知ってたよ。
 私の言葉に長い前髪の下で目を逸らした彼の手を握ると、白い耳が面白いほど鮮やかに色づいていく。こういう可愛いところが好きなのだ。心を閉ざして外界から自分を切り離しているかのように見えて、その実柔らかくて脆い心を守っているだけ。一度受け入れさせてしまえば、純粋な感情を簡単に晒してくれるようになった。
 初めて彼を見つけたのは、旅行中に急な雨に降られてこの図書館に避難したとき。彼は覚えていないだろうけれど、無言でタオルを差し出したときのあの目。絶対に本を濡らしてくれるなと言うかのような瞳に見下ろされた瞬間、この人が欲しいと思った。
 この街に引っ越して通いつめて、他の人が話しかけないのをこれ幸いと彼に話しかけ続けた。押しに弱そうだという読みは当たっていて、いつの日からか私が話しかけると動揺で睫毛が震えるのが好きだった。そうなればもうこっちのものだ。
 神様になんか任せてられない。最初から最後までプロデュースして、手のひらの上で転がしてあげなきゃ。


『最初から決まってた』

8/7/2023, 11:30:38 AM