-始まりはいつも-
「おはようございますっす、主様」
『んー…おはよう……アモン……』
いつもスマホから聴こえる声が、今日はなんか…はっきりと聞こえるような…音量の設定いじったっけ…なんて
目を開ける前にぼんやりと思いながらスヌーズを使うのに手探りでスマホを触ろうとすると誰かの手に触れた。
一人暮らしの生活でありえない感触にばっと覚醒してガバッと起き上がると
「うわっ!!…びっくりしたぁ…」
目の前に会いたくて会いたくて仕方がなかった張本人が驚いた顔をして私を見ていた。
…これは夢である。間違いない。だってここは私の部屋だ。
デビルズパレスではない。夢見がちの私だって流石に現実と区別はできる。
『今日はいい日だ…好きな人の夢を見るなんて…』
「…へへっ、主様に好きって言われるなんて、光栄っすね」
すごい、私の脳。本当に画面越しでしか見ていなかった彼が、動いて私の頭を撫でている。
それがなんだか心地よくて、もう片方のアモンの手に触れまたうとうとし始める。
『夢ならもう少しだけ…』
触れたアモンの手をベッドへ引き寄せる。
あ、主様??さっきよりもっと近くで焦ったような声が聞こえた。
すんっと鼻で息を吸うと薔薇の香りがする。
アモンってきっとこんなふうに服も薔薇の香りがするよね。
なんて素敵な夢なのだろう。
『もう少し…一緒に寝ようね、アモン』
アモンの胸に腕を回し、ふたたび意識が朦朧としてくる。
これはいい夢だから、もう少しだけ、もう少しだけ、とアモンの胸に顔を埋めた。
昨日、ベルガモットのアロマを焚いたけど、夢の補正なのか。
また今日も寝る前に同じアロマを焚こう…
「…うーん…夢じゃないんだけどなぁ……困ったっすね…」
再び起きた後、アモンが本当にこちらの世界にいて、
これこそが現実なんだと知るのは、あと数時間後
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aknk
10/20/2023, 1:13:29 PM