蝉助

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「チェル、これあげる。」
「なにこれ。」
渡された紙袋を様々な角度から観察するレイチェルに、ジルはにこにこと嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「開けていいよ。」
紙袋は縦横40cmほど、上からは箱が見えるだけで何が入っているのかを特定できない。
いたずら好きなジルだ。
嫌がらせなのでは、と瞬時に訝しんでみたが、ジルが悪い事をするときはそれを隠そうと真顔になるので、おそらくもっと別のなにかだろう。
彼はずっとレイチェルが紙袋の中身に触れるのを待っている。
「……変なものだったらぶっとばすから。」
「いいよ!」
箱を取り出し、ラベルを剥がして蓋を開けた。
「うわ。」
「綺麗でしょ?」
「なにこれ。」
「見たまんまじゃん、ハイヒール。」
ぱっきりとした赤色、心臓から少し外れた肩を突くような鋭いかかと。
まるで女を象徴するかのような研ぎ澄まされた出で立ちに、レイチェルは顔をしかめる。
巡り合わせてこなかったものだ。
「おれからプレゼント。」

「ヒールなんて似合わない。履いたこともない。」
「似合うよ。好きな女の子には可愛いもの身につけててほしいから。」
「お前の好きは恋愛じゃないだろ。軽率にその言葉を使わないで。」

4/8/2024, 2:30:31 PM