バイトの最終日に、出入口で待ち伏せしていた先輩に花束を渡された。
彼女はそれを、作り笑いを浮かべながら受け取った。
家に帰ると、花束を見た母親は「綺麗だね」と花瓶に生けた。娘の恋人が気に入らない父親は「おまえの彼氏よりいいんじゃないか」と言った。
たしかに、先輩の好意は知っている。わかりやすかったからだ。
しかし、必要に駆られ連絡先を交換したところ、すぐに返信を返さないと病んだメッセージを送ってきて、挙げ句の果てにはリストカットの写真を送ってこられ、もう関わりたくないと思っていた。そんな個人的な話を、親に話すつもりもなかった。
だから、親の言葉にも苦笑いだけ浮かべて返した。
花はいつか散るもので、しかしまさか、彼女自身の花を散らすとまではその時は思っていなかった。
『花束』
2/9/2024, 10:26:31 PM