「私とあなたじゃ住む世界が違う 三十一話」
スモークとスプライトの二人は、残党の饅頭を追っていました。
「オイ、あの二人追って来るぞ」
「逃げろォー」
饅頭達は、追って来る歌い手達から、必死に逃げようとしました。
「饅頭だから、追いかけるの楽だねー」
「饅頭は、この世界じゃ一番弱いモンな」
「数は一番多いけどね」
スモークとスプライトの二人は、興味本位で饅頭達を追っていました。
「巻くぞ」
饅頭の一人がそう言うと、饅頭達は多岐に分かれて逃げ出しました。
「あれ?」
スモークは、分かれて逃げ出した饅頭達を見てきょとんとなりました。
「どうしたんだろう?」
「スモーク、攻撃とか仕掛けて来るぞ!」
スプライトはスモークに注意すると、
「食らえ、煙玉!」
饅頭達は、煙玉を二人に目掛けて投げつけました。
「うわっ!」
「前が見えない…」
煙が周りに立ち込めて、饅頭達を見失ってしまいました。
「くっそー、逃げられたか…」
「大丈夫、足跡があるから」
地面には、饅頭の通り道がくっきりと残っていました。
「石化した饅頭を引きずった跡だね」
「スモーク、やるな!」
「追ってみよう」
「…追ってみるか?面白そうだけどな」
「饅頭達が何探してるのか気になるしね」
スモークとスプライトは饅頭達がどこに行くのか気になったので、好奇心で追う事にしました。
「俺達、まるで探偵みたいだな!」
「探偵ごっこってやつ?」
「スモークが、一番探偵って言葉似合うぞ!」
「褒めても、何か出る訳じゃないけどね」
スモークとスプライトの背後に、木の上で二人を見ている、薄いベージュの肌、茶色い大きな目、金髪のウェーブ掛かったロングヘアで、両側をツインテールにしている髪型、中肉中背でグラマー体型のガーリーファッションの愛らしいお姫様の様な女性がいました。
「私、セラフィちゃんの試作品、試してみようかなー…?」
スモークは背後の気配を感じ取り、とっさに後ろを見ました。
「…誰か居たのかな?」
スモークが見る限り、誰も居ません。
「気のせいかな?」
「…うーん、灰色の子は気づかれそうだなぁ…金髪の方にしーよーおっと」
セラフィは、試作品の回帰光玉をスプライトの方に投げつけました。
「何だ?光か?」
スプライトは後ろを振り向くと、回帰光玉が自分目掛けて飛んで来ました。
「危ない!でも、眩しすぎて見れない…」
回帰光玉は、庇おうとしたスモークにぶつかりそうになったので、スプライトは、わざと自分に当たるようにスモークを庇いました。
「だ、大丈夫?」
「俺は、ドッチボールの玉、食らっただけで大丈夫だぞ?」
スプライトの姿は、冒険服から私服の姿に戻っていました。
「スプライト、ソレ…グループ結成前の姿じゃん…」
スモークは、青ざめていました。
「俺が食らったのって、回帰光玉か…?」
スプライトは呆然としていました。
「…でも、この姿って、個人のみで活動してた時の姿だから、完全に一般人に戻った訳じゃないよね?」
スモークは、スプライトをフォローしました。
「…何とか逃げ切ったな」
「一時はどうなるかと思ったぜ」
饅頭達は、アジア建築の古びた塔へ逃げました。
「傷付いた仲間達を手当だ!」
「…この方角だと、あの建物がある場所に逃げたっぽいね」
「ああ、そうだな…」
二人は、饅頭達が逃げた塔の方を見ていました。
「多分、敵の本拠地の様な場所だから、応援は呼んだ方が良いと思うんだけど…スプライト、どう思う?」
「その方が良いかもな…」
スプライトは、元気が無い状態でした。
「…スモーク、一度、サンダーウイップ使うけど、良いか?」
「良いけど、どうしたの?いきなり」
スプライトは、木に向かってサンダーウイップの電気を放ちました。
「やっぱりな…威力が大幅に下がってるな」
「……」
スモークは、沈黙してしまいました。
「スモーク、グループの皆に伝えてくれ。俺は、これじゃあ足手まといになるだけだ。皆には、迷惑がかけられない…」
「つまり…フロンティアウォーカーから去るって事…だよね?」
スモークは、涙目になっていました。
「俺だって、こんな去り方は納得出来ないぞ?…でもな、俺はグループの力を失ったんだ…後は、健闘を祈るぞ」
涙を流しながらスプライトはそう言うと、スモークの前から姿を消しました。
9/29/2022, 10:33:06 AM