白糸馨月

Open App

お題『愛を叫ぶ』

「はぁー、推しマジ最高! もう、ビバ推しって感じ!」

 数人のクラスのオタクグループが今日も騒がしい。今日も彼女達は、机の上にグッズを広げながらデカい声で彼女の推しの話をしている。
 それを遠くからクラスのカースト上位の男子たちが教室のすみに集まって、彼女達に絶妙に聞こえそうな声のトーンで笑いながら「あいつら、キモ」とひそひそ話をしている。
 私はこの休み時間が嫌いだ。自分の好きなものをあけっぴろげに話すのも、自分の好みに合わないものをやめさせるような空気を作るのも。
 この時間がくるたび、早く家に帰りたくなる。

 家に帰って、自分の部屋に入る。ここからは、自分だけの時間だ。

「Aくん、ただいまー!」

 そう言って、私は自分のベッドにダイブして推しのぬいぐるみを抱きしめて特ににおいもしないけど、匂いを嗅ぐ。
 私は隠れオタクで、よりによって悪目立ちするクラスメイトと推しが同じである。だが、私はガチ恋勢で、同担拒否だから仲良くなることは出来ない。
 それに自分が好きなものを「俺達にとって不快だからやめろ」と言われたくない。

「あーん、もう、Aくん好き好きー! 学校なんてもう行きたくない、Aくんと一緒にいたいよぉー!」

 私はベッドでごろごろ転がりながら、推しへの愛を叫び続けた。

5/12/2024, 1:31:01 AM