嗚呼今日も土砂降りか。この世とは誠につまらぬものである。どこまで行ったって全て生まれ持ったもので人生がおおよそ決まってしまう。私などが具体例だ。私は生まれた頃から足が両方なかった。両親はそんな私をみるたびに胸が締め付けられているような表情をしていた。でも当時の私は幼く外を見ていなかったので自分が悪い方で特別な人間だと夢にも思っていなかった。そして不便だとは感じるが別に腕で引きずって動けば家の中を徘徊できる。だから私は歩くや走るといった行動にあまり羨ましがっていなかった。けれど年月が経ち初めて外へ出なければならない時に痛感した。なるほど確かに外へ出るには私の体だと無理だった。這いずろうとすれば服は破けどろんこになるし変質者のような目を向けられることだろう。だから親に抱かれて幼稚園に登校する時も周りから哀れみの目線や奇異の視線を感じてまるで自分がサーカスのピエロになったかのようであった。小学校に上がると祖父が入学祝いとして一台の車椅子を買ってもらった。その車椅子はとても使いやすく持ち手はよく手に馴染んだ。小学校では予想した通り変わった物を見る視線を向けられた。さらにいじめまで受けた。教師も無視する始末。結局教育委員会まで事件として届くまでの大ごととなってしまった。いじめグループ全員が粛清されると他の人は私を恐れたのか誰も近寄ってこなくなった。そんな状況が中高大と続きもう嫌だ。と思った。成人式を終えて私は小学校から使っている車椅子に乗ってそのまま成人式の帰りの電車に轢かれようとした。でもダメだった。黄色いブロックのタイルの凸凹のせいで死に直面した時の特有の脱力感のせいで進むことはできなかった。結局家に帰ってきてしまった。少しの喪失感に襲われながら食べた飯の味は今でも忘れられない。性懲りも無くまた自殺しよう。そう思いながらテレビをつけるとそこには義手や義足についての特集があった。我ながらハッとした。そうだ。ないなら自分で創ればいいじゃないかと思った。私は人より頭一つ飛び抜けて勉強ができたのでその脳を使ってもう一度大学を入り直し開発者になった。こうして私の戦いは続いている。あの時のないものねだりを可能にする。そう思うと胸が熱くなった。
この物語はフィクションです。
お題ないものねだり
ここまで読んでくださってありがとうございます!!
3/26/2024, 10:55:22 AM