それは子供の頃誰もがやるような度胸試しだった
大股3歩ずつ離れた3つある川の石をぴょんぴょんと跳ねて対岸まで渡るという簡単なものだった
川の流れはまあまあ速かったが溺れるほどの深さは無く
滑りやすい石の上を皆器用に飛んでいた
田舎で学校も小さい事もあって小学3年生から6年生合わせて10人ぐらいだった
皆仲良く、その川で遊んでいた
小学3年生から度胸試しに挑戦できて川の流れの速さと滑りやすさからなかなか飛ぶ事ができない子も多かった
俺もその1人で1年経った小学4年生になっても飛ぶ事ができずビビリ扱いされた
もちろんと言うべきか一個年下の子達はひょいひょい飛んで度胸試しに成功していた
今日こそ飛ぼうと決めた日には大雨が降って飛ぶ事ができずまた別日に今日こそはと見てみると雨上がりで川の水が多く近づく事が禁止されてたりとなかなか機会に恵まれなかった
そんなこんなで夏の最後ギリギリで絶好のタイミングに見舞われた
川の水量も標準で石自体そんなに濡れておらず滑りにくい
飛ぶなら今日が1番と先陣を切ったみんなは言って居た
でも少し気になる事があった
昨日、一昨日と今年1番と言っていいほどの大雨が降って居た
その割に川の水はいつもより少ないぐらいだった
でもそんな事を友達に話してもビビってるのか?の一点張りで確かに今日しか飛ぶ機会は無いと思った
勇気を振り絞って開始位置に立ち
足に力を入れる
助走はつけないのが掟の一つで立ち幅跳びの形式で石に飛び乗る
すくむ足を抑えぴょんと一つ目に目がけジャンプをする
成功した
上手く飛び乗る事ができた
後3回これを繰り返すだけ川の流れる音が強く周りの声は聞こえないがさっさと終わらせよう
ぴょん
2回目も成功した
後2回簡単な話だ
そう思い前を向く
友達が応援してくれているのか何か叫んでる
その応援を胸にもう一歩踏み出す
もちろん成功
でも少し近づいて何を言っているか少し聞こえた
「・・・・ろ!!」
ろ?頑張ろうって言ってくれてるのだろう
そう思い最後の1歩4回目に飛び込む
何かの偶然か最後の1歩は
届かない
当然水の中に着地する
水の中に着地するということは滑りやすい場所に勢いよく着地するという事だ
当然落ちる事なんて想像して居ない
滑って転び頭を打つ
意識は遠のく
遠のく意識の中「ガハハ」と友達の声じゃ無い笑い声が聞こえた気した
目を覚ますとそこは村の診療所の病室だった
記憶は確かに残っており川に落ちて誰か助けてくれたのだろうと思った
身体を起こすと偶然見回りに来た看護師が先生を呼びに行った
先生と一緒に警察の人も来た
「友達について教えてくれるかな?」
警察の人はそう聞いてきた
最後にいた場所を教えると確信したように先生に警察の人は耳打ちする
「何を話しているの?」
当然の質問だ、もしかしたら何かあったんじゃ無いかって気になるに決まっている
2人は少し悩んだ顔をして警察の人がこう答えた
「きみと一緒に居た9人は土砂崩れに巻き込まれて亡くなった」
川の対岸だけに影響する土砂崩れだったらしい
俺は川の下流まで流され無事だったそうだ
届かない
その偶然が俺の命を救った
でももし俺に勇気があってもっと早く飛べていれば
その日より前の日に飛べていればまだ9人と遊べて居たかもしれない
(フィクションです)
5/8/2025, 11:06:02 AM