私は中2の夏休み明け、急に学校に行かなくなった。
はっきりとした理由は思い出せない。
6月位からクラスの雰囲気がなんとなく合わないと感じていた。
思春期真っ盛りの男子の会話も、
隣のクラスの女子が先輩と付き合ったなんて話も、
理科の先生が体育館裏でたばこを吸っていたなんて噂も、
全部、つまらなかった。
夏休みに入り、クラスメイトと会わない日々が続き、確証した。
あそこは、自分の居場所ではない。
あんなくだらない場所に行っても意味がない。
そう。私は自分からあの場所を絶ったのだ。
自分を誇らしくさえ思えた。
不登校のやつは、意気地なしだのなんだの言うけれど、
私は自分で行かないという選択をしたのであって、
社会の流れに身を任せて、なんとなく学校に運ばれていく
規則正しい制服の団体とは違うとどこか嘲笑っていた。
好きな本を読み、好きな映画を見て、好きな紅茶を飲み、
好きな時間に自由に勉強をした。
だが、一週間もすると以前よりつまらなくなった。
自分こそが「意味のない存在」に思え、
みんなと一緒ではない自分に恥じた。
三学期になると
泣いたり、自分に苛立ったりしながらも
なんとなく学校に行きはじめ、
恋をして、好きな人と会うために学校に行き、
下校時、友達と生徒指導の先生に見つからないように
ドキドキしながら肉まんの買い食いをしたり、
たまに学校に行けず布団にうずくまったり
今日という日が流れるように去っていった。
あれから20年
成功や理不尽、挫折や希望、
はじめての恋や死んでもいいと思うような失恋、、、
全ての時を経て、私という存在が形成されている。
「意味のない」とは___
「意味のある」 ということだ。
午前中の家事をクリアして、
LUPICIAのフレーバーティーを飲んでいると
美咲が部屋から出てきた。
「お母さん、頭痛い……。から。今日は部活休む…」
私は美咲に微笑みながら言った。
「いいんじゃない?
それは、とっても意味がなくて、意味のあることよ。」
「意味がないこと」
11/8/2023, 11:33:37 AM