『生人図書館、これにて閉館。』
灯っていた蝋燭はゆっくりと消えていった。
生人図書館。生者の未来を記す不思議な本が置いてある図書館。俺はここの司書をやっている。大勢を殺し処刑された俺に、神様とやらがくれたものだ。
『まぁ、俺に罪の意識なんて無いんだけどな。』
はぁ、退屈だ。
俺はここで、優越感に浸るために司書をしている。ここに来る奴は惨めで、哀れで、可哀想な奴ばかり。実に居心地が良い。でも、何だか違うんだよな。
『チッ。もっと俺の存在を上げてみせろよ。』
机を思わず蹴った。机の上に置いてあった本が落ちてくる。あぁー、癖は直らないもんだねー。
落ち着こうとコーヒーを淹れる。コーヒーなんて色のついた飲み物、死んでから初めて飲んだな。意外とイケる味をしてる。少し落ち着いて、先程落ちた本を拾い上げる。この本に記された人間は、もうすでに死んでいる。生人図書館にある本は、死んだ人間のものは置いていない。その人間が死ぬと同時に消滅してしまうからだ。しかし、この本は消えない。何故なら、この人間は、まだ存在しているから。彼もまた、神に拾われた哀れな魂だ。
『一度会ってみたいねぇ。故人図書館の司書さん。』
神は、俺に言った。俺のライバルに値する奴が居ると。それが、故人図書館の司書だ。俺と同じ境遇であり、俺とは真逆の図書館で働いている。一度本気で殺し合ってみたいもんだ。まぁ、負けても死なないけどな。
『さて、そろそろ生人図書館を開くかね。』
俺がそう言うと、蝋燭が灯り始める。
『ようこそ、生人図書館へ。』
さぁ、傍観しよう。あいつらの天国から地獄まで。
2/12/2025, 4:01:33 PM