いろ

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【微熱】

 俺の横では腐れ縁と称すべき幼馴染が、妙にイライラとカップ麺の出来上がりを待っている。小さな『上手くいかない』が積み重なって不機嫌になっているのだろう。そこでどうして今日に限って上手くいかないのかに全く思考が及ばないあたりが、俺からしてみると相変わらず馬鹿なのだ。
「それ食ったら今日はもう寝ろよ」
「……何で」
 ギロリと睨みつけられるが、コイツが俺を傷つけることはないと知っているので何も怖くはない。わざとらしく軽く肩をすくめてみせた。
「熱あるだろ。悪化させたくなきゃ大人しくしてろよ」
「え……?」
 ぱちりと目を瞬かせたソイツは、不思議そうに首を捻る。そうしていると途端に印象が幼いものに変わるのだ。
「また気づいてなかったのかよ。いいかげん自分で自覚しろって」
 言いながらソイツの額に手を当てた。この感じならまあ微熱だろう。無理せず寝ていればコイツなら明日には下がってるはずだ。医者に診せる必要はないなと判断した。
「……いつも気づいてくれて、ありがとう」
「はいはい、そりゃお前より俺のほうが、お前のことをちゃんと見てるからな」
 まったく、いつまで経っても俺の幼馴染は手がかかる。それを面倒とも厄介とも全く感じていないのだから、俺も俺でたいがいだとは思うが。お湯を入れて3分経ったことを示すスマホのタイマー音がピロピロと、二人きりの室内に鳴り響いた。

11/26/2023, 9:56:40 PM