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▶110.「あなたは誰」
109.「手紙の行方」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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地下通路の入り口を守る6班の元に早馬がやってきたのは、
技術保全課の課長ホルツが収納庫から見つかった手紙を懐にしまった後のことであった。
到着したのは、国境や街道の警備を担当している第三隊の者であった。
後ろに誰か1人乗せている。

かなり急いで来た様子で、馬も苦しそうだ。

「こちら第三隊。至急連絡です」

地下通路は、なんの訓練も受けていない人間が歩いておよそ半日、12刻ほどかかる。軍人なら6刻ほどで踏破できるが、それでも時間がかかる。
そのため、交代で通路の中間地点あたりに隊員を配置していた。これにより、隊員はトップスピードギリギリまで速度を早めて伝達することが可能になる。

早馬の到着から3刻後、第二隊6班の班長ライラの元へ報告が届けられた。

さらにそれから5刻の後、早馬の後ろに乗っていた1人が背負われた状態で元技術局に到着し、ホルツ課長のところにやって来た。
「課長、遅れました」
「おお、ミハ。よく来てくれたな。その姿はどうしたんじゃ」

「いや、恥ずかしいことに私は馬が得意ではなくて。まごついているところを、第三隊の方たちが早馬に乗せてくれたのですが」
「ははぁ、足腰がやられたんじゃな?だから普段から鍛えておけと言ったじゃろ。悪いが、分かったことを教えてくれるか?」

「はい。第三隊が集めた目撃情報から、この件の最重要人物とされているシルバーブロンドの目的地を断定しました。場所はここ、元対フランタ技術局。予想通りなら到着は3日後です」

「では、そやつが?」
「証拠がなく断定はできません。ただ、徒歩ながら連日夜通し移動しており、一日あたりの移動距離は人の能力をはるかに超えています。また、想定される移動ルートの途中に湖があり、迂回すると推察されています。第三隊隊長はその前に確保したい考えです。それから…

そうして暫く情報共有は続き、
ひと通り話し終わったところで、

「なるほどの。よく伝えてくれた、今はゆっくり休め」

ミハを休憩場所にしている部屋、おそらく当時暮らしていた局員の私室だが、その一つに押し込んだ。

資料室に向かいながら、ホルツは呟いた。

「3日後か…この手紙のことを話し合うには、ちと時間が足りんのう。なぁ、シルバーブロンドよ、お前さんは一体誰なんじゃ?」




サボウム国でダメージを受けたナナホシ。
回復させるための手がかりを探すため、
人形たちは、動力を節約しつつ日夜歩き続けていた。
【その中で、ある変化があった。サボウム国から入った時には無かった雪が施設に近づくにつれて増えてきている。人形はナナホシが冷えないよう、時折温石を火で暖め使いながら、進んでいた。】

この夜も、ナナホシがいた施設をまっすぐ目指して木々の間を歩いていた。


「ナナホシ、水の匂いがする」
そう人形が声をかけると、ナナホシはナビゲーションモードから戻ってきた。

「ン…僕ニ内蔵サレテイル地図ニヨルト、湖ガアル。目的地ハ、ソノ先」
「見えてきたら迂回しよう。目印になるようなものがあればいいが」

そのまま少し行くと、街道に出た。【ここだけ雪がないので整備されているのだろう。】水は人間にとって大事な資源だ。近くに町があるかもしれない。

「さて、右か左か」

少し立ち止まって思案した、その時。


「そこの男、待て」
物々しい雰囲気を醸し出しながら男が声をかけてきた。
後ろには何人か部下のように付き従っている。

「私のことだろうか。あなたは誰だ?」
軽く周囲を見渡すが、他にそれらしい人間は見当たらない。

「そうだ。私は第三隊隊長ミナト。お前には我がイレフスト国の重要機密を盗んだ疑いがある。悪いが拘束させてもらう」

2/20/2025, 9:52:12 AM