刹那

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私の名前

ふとした瞬間に、自分が何者なのかを見失う。
雑踏の中で立ち止まり、行き交う人々の中に一人立ち尽くす。

皆、自分が自分である事を疑いもせずに生きている。
それもそのはず、自分は他の誰でもない、自分自身なのだから。当然の如く。そもそも、自分が何者なのかなどという愚問が脳裏に浮かぶ人間が、自分以外に存在するのだろうか。

「あぁ、こんなところにいた。―――、帰ろう」

振り返ると、自分の名を呼ぶ声の持ち主がいた。
相手の笑顔を見て、自然と笑みが溢れる。

私はあなたに名前を呼ばれるために生きる者。

7/20/2023, 3:24:36 PM