題名 『大きくなったら、』
『皆の将来の夢を短冊に書いて貰って発表して貰おうと思います、!!!』
小学生の頃の担任が、そう言った。
将来の夢か⋯、
子供の頃。俺は、子供の時間が楽しくて仕方無かった。
そう、子供が憧れる物。
"仮面ライダー"。
皆観ている"仮面ライダー"。俺は、それが好きで好きで仕方無かった。
今でも、変身ベルトを装着しているし、今でも戦っている。格好良いライダーが大好きだ。
だから、『仮面ライダーに成る事。』と子供の汚い字で書いた。周りが、『消防士、!』やら、『警察官、!』やら話している時。俺の番が回って来た。
『じゃあ、上田君の将来の夢は、?』
『"仮面ライダー"に成る事です、!!!』
嘲笑い声が聞こえた。
『仮面ライダーは現実には居ない。』と言う人も居れば、『もう小学生なのに…、?』と言う人も居た。
少しして、休み時間。担任の先生に呼び出された。
何か、励ましの言葉を勝手に求めていた。
『もっと、ちゃんとした事書き直そう、?』
唖然だった。
先生ですら、夢の話を否定してくるのか。
"ちゃんとした夢"って何なんだ。
俺は、嘘を書いた。
『カメラマンに成りたいです。』
そう、書いた。
カメラマンなら、仮面ライダーを沢山撮れるから。
心の中がぐちゃぐちゃした。
『仮面ライダーに成りたい。』と書いた短冊を家でぐちゃぐちゃにしてゴミ箱に捨てた。
~数年後~
変身ベルトを身に付けて、変身ポーズをする少年をカメラで撮った。嗚呼、本物だ。本物の、仮面ライダーだ。
子供の頃、『仮面ライダーは居ない』と言ったあの子に見せたい。仮面ライダーは居る。
ずっと、ずっと。世界が終わら無いのは、仮面ライダーが守ってくれているから。
子供の頃。嘘の短冊に書いたカメラマンも仮面ライダーの一部。そう、ヒーローなのだ。
2023.6.23 【子供のころは】
6/23/2023, 10:32:27 AM