小砂音

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#8 1つだけ


――宝物など大して持っていないよ。……1つだけ。

「1つだけ」というテーマでまず思い出したのは、昔の自分が作った曲に、昔の自分が綴った歌詞の一節だ。(完全引用ではないが)

当時も、思い出しているまさにこの時も、その宝物が何であるかは明確にしていない。
だけど私は知っているのだ、自分に宝物は1つしかないことを。

敢えてそれを今、言葉に変換してみる。

恐らくそれは、時空を超える、五感に関わり、哀愁に似ている、愛情の形をピタリと模した、心で思い出す記憶かつ最新情報かつ予感だろう。他者と膜1枚分だけ隔てられた――逆に言えば、他者と自身が限りなく近い――場所にある、人間であれば皆お揃いの、それでいて唯一無二の“もの”だろう。

やはり宝物ともなれば、それのことを思い出すとじんわりとうれしい気持ちになる。すごいことだ。

忘れた頃という延長線上の未来にまた、この1つの宝物について反芻し、形容する日が有ればいいな。

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#7に対する補足:
“大切なもの”と“宝物”の差は、宝箱にしまっているか否かです。

4/3/2023, 1:05:53 PM