霜月 朔(創作)

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七色


貴方に出逢うまでは、
私は人の姿をした、
ただの動物でした。
常に孤独で、心を持たず、
誰の目にも止まらない、
見捨てられた存在でした。

ですから。
私の世界は、
いつも灰色で、
私の心は、
果てしない闇の色でした。

でも。
貴方が教えてくれたのです。
この世界には、
色鮮やかで、
美しいものがあるのだと。

春の葉は、瑞々しい緑に輝き、
夏の空は、どこまでも澄んだ青を描き、
秋は山々を、黄や橙に染め上げ、
冬の夜空には、月が淡い紫を滲ませる。

そして虹は、
七色に煌めくことを、
貴方が、私に教えてくれました。

貴方は、私の心を、
七色の光で、優しく染めてくれたのに。
貴方の心は、次第に、
醜いこの世に踏みにじられ、
その鮮やかさを失い、
悪意の黒に蝕まれていったのです。

だから、私は。
貴方を、赤に染めました。
貴方と私の中から流れ出す、
とてもとても美しい……生命の赤で。

これで貴方は、
私の色に染まり。
これで私は、
貴方の色に染まり。
そして、二人の色は、
混ざり合い、そして、溶け合い、
七色は、永遠となるのです。

3/27/2025, 5:00:36 AM