最初はひとひらだった。
いつの間にこんなに俺の世界を染め上げるまで積もらせていたのだろう。
「わぁ、道路まで桜色だね!」
ほぼ散りかけの桜の木の下、彼ははしゃいだように声を上げた。
この桜みたいに淡くて綺麗な色だったらよかった。
この桜みたいにいつかは完全に散る仕組みになっていらばよかった。
生憎そんな都合よく俺が見える世界は回っていない。
ふと目についたのは道路脇で溜まって醜くなってしまった桜の花びら。
例えるならきっとこれだ。
ひとひら #211
4/13/2025, 1:32:59 PM