「最後くらいさぁ、しおらしく泣いてお別れするとかそういうの、無いの?」
「なに、泣いてあげようか」
「嘘泣きが欲しいんじゃねーんだわ。……いいよ、これくらいドライな方がお前らしいし」
思えば出会った時からそうだった。
仲良しだとか、親友だとかになったとは思ってないし、コイツもそうだろう。
なんとなくウマがあって、なんとなくつるむことが多かった。それだけ。
「君こそ、泣いてくれていいんだよ。意外とセンチメンタルだもんね。雰囲気に当てられて内心苦しいんでしょう」
「ハッ、泣かねぇよ」
誰が泣くかよ。
これで終わりです、今日でみなさんとサヨウナラですなんて、分かりやすく思い出をファリングするための儀式なんかで泣いたら、それこそ本当に終わりみたいじゃんか。
「天邪鬼は変わらなかったね。もうちょっと素直になれたら楽になれるから、がんばろうね」
「ガキ扱いすんなよ」
「心配だよ。世渡り上手に見せかけた器用貧乏さんだし、偽善は捨てられないし、プライド高いし……」
「ケンカなら受けるけど?」
最後の最後で悪口大会開催か?
「泣かないでね。泣いたらちゃんと報告してね」
「…………泣かねぇよ」
「心配だよ。心配してること、覚えてて、忘れないでね」
握手も無い。
ハグも無い。
手も振らない。
涙は出ない。
月に叢雲花に風、サヨナラだけがなんとやら
3/17/2023, 12:42:32 PM