景色は強く焼き付き、自分の中へ溶着するものだ。
景色は、その頃の会話や想いを映さない。ただ景色として、依代の如く佇むのみ。
そんな中で、一つだけ異質な鮮明さを帯びた10分がある。
とは言っても、しょうもないものである。
幼少の頃に行った遊園地の、緩やかなコースターに呑まれたことだ。
下降する時に暗闇に飲まれたことに驚いて目を瞑った。その後、目を開けば異郷に誘われたようで。華やかで、桃色と藤色の混ざり合う世界は浮世離れと言うに相応しい。輝く景色は、あっという間に小さな体を呑んでしまう。
そのときに初めて、私はときめきを知る。
自分と異郷の対話を交わしたその日から、今になれば異郷は私のものではなくなり、故郷にさえ思う。
その景色は、今の私とは絡み合っていない。その寂しささえ、輝きを増させる。
7/8/2025, 12:25:01 PM