〈星〉
ふたりで星を見上げていた。静寂。息を潜めて星を探す。「あ、あれ」右の空を指す。ふっと吐いた息が白い。
「え?」
近づいてくるきみの髪の毛がくすぐったい。
「あれ、あの三つ並んだ星があるでしょ」
夜空を指でなぞると、もう片方の手をきみがぎゅっと握りしめた。僕はどきっとして、視線を移した。きみは表情を変えず、空を眺めている。
「どれかわからないなぁ」
歌うようにきみが呟く。
「見つける気がないでしょ? 手を繋ぎたかっただけで」と僕が繋いだ手をわざとらしくぶんぶんと振ると、きみはにこっと笑って僕を見た。
「ばれた?」
ははは、ときみが歯を見せて笑う。
3/11/2025, 11:44:13 AM