いろ

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【20歳】

 二十歳というものはとてつもない大人に見えていた。ガキの俺の手を引いて、いつだって守ってくれた年の離れた姉の姿を脳裏になぞる。
(なあ、姉さん。俺もアンタと同い年になったよ)
 物言わぬ墓石の前に立ち尽くす俺の頬を、冷たい夜風が撫でていく。あの頃はあんなに大きく見えていた彼女の背はとうに越してしまって、ついに年齢まで追いついてしまったというのに、俺はまだどうしようもないガキのままだ。
「約束、果たしにきたよ」
 日付を跨いだ瞬間にコンビニで買ってきた缶ビールを、墓石の前に置いた。大人になったら一緒に酒でも飲もうって約束が、まだ有効なのかはわからないけれど。待ってたよと優しく笑う姉の声が、遠く聞こえたような気がした。

1/11/2024, 7:29:08 AM