アクリル

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突然の君の訪問。


烏滸がましくも予感がした。
君はきっとこの部屋を
最後の砦だと思っている。

インターホンさえ
今となってはいらない。
躊躇なくサムターンを回す。

ずる、と崩れる見慣れた人影を
壁を背に受け止める。

静寂に包まれた玄関で
少し痩せた君を包む
生きていてほしい、と思った。
反射的に口が開いた。

「寝よう、いっしょに」
「うん」

小さな返事と同時に、伏せられていた君の目が開く
その痛みと、幸福が混在した眼差しが
安心に変わるまで
ここで守らせて。

8/28/2024, 5:13:45 PM