龍那

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[風に乗って]

 噂が風に乗ってきた。
 ひらりと飛んできたそれを捕まえて、読む。
「ふむふむ。井戸を覗くと影がこっちを見上げてる……なるほどなるほど。これはよくある怪談だねえ」
 読み終えたそれを台帳に書き留めて。小さく小さく折りたたむ。
 そして、ぱくり、と口に放り込んだ。
 べっこう飴に似た重たい甘さが、とろりと溶けて舌に絡む。
 美味しいと思ったのは最初だけで、飲み込んで残ったのは、薄くてスカスカとした、軽くて物足りない味。
「うーん。これは……100日くらい経ってるのかもなあ」
 次はもっと新鮮な噂を食べたいなあと思いながら、台帳を棚に戻した。
 

4/29/2023, 1:49:07 PM