季節が変われば、人々の装いも変わる。
 それは、美しい。
 その季節を象徴とする色に、多くの人々の装いも染まる。
 この情景は、人々が豊かで無ければ、見ることは叶わない。
 私のハンカチには、ふたつの大文字のアルファベットが少し重なるように
 妻が、深く染められた絹糸で刺繍してくれたものだった。
 この深く染められた絹糸を人々が躊躇なく買える、
 そんな安定した、豊かな、平和な治世にしたかった。
 今、私は……やっと、そう思える。
 私の成したことは、間違ってなかったと。
 この、私の治める地の人々を、この年も困窮されなかったと。
 嗚呼、本当に良かった。
 ああ、本当に良かった……。
 目から涙が溢れて、溢れて、止まらなかった。
 どのくらい、経っただろう。
 気付いた時には、側に妻が居た。
 優しく微笑みながら、私の頬をつたう涙を……
 あのハンカチで、そっと拭いてくれていた。
 
 
 
 
 
10/22/2023, 12:40:53 PM