『ルール』
深夜0時を回った頃。自室のバルコニーにリボンで結んだ赤い薔薇を二輪置く。柵の上や近くに置けるとなお良い。
朝、白いリボンが結ばれた赤い薔薇が一輪置かれていたら、近日中に迎えがくるという。
その日から気にかけるのは、虫の音のように小さく澄んだベルの音だけ。薔薇を置いた時間と同じ刻、その音が鳴る。
肯定なら三回、否定なら二回窓をノックする。
窓の鍵を開けてしまえば後は彼の手に身を委ねるだけだ。
それは、令嬢とこそ泥さんとの秘密のルール。
この地方に古くから伝わる遊戯だ。
中には心の底から家を抜け出したくて、彼を頼る令嬢もいるという。
その場合は赤ではなく青い薔薇を、リボンはつけずに置いておく。
青い染料に浸けた白い薔薇を手に取りバルコニーへ。
どうか、私を連れていって。
4/24/2024, 11:20:18 PM