「どうしておばあさんの口はそんなに大きいの」
おばあさんになりすましたオオカミに言う有名な赤ずきんちゃんのセリフ。
幼少期の私はあかずきんちゃん、おばあちゃんじゃないよ。オオカミになってるんだよ!早く逃げてって心配でたまらなかった。
思春期の私は、いくら物語だからって人間と動物を間違える設定は無理ありすぎって冷めていた。
そして、社会人の私はどうして赤ずきんちゃんはオオカミをおばあさんだと思ったんだろうと考える。
先入観と思い込みなんだろうか。
オオカミなんかが人間の真似をできるわけがない。ここはおばあさんの家だから、ベッドにおばあさん以外が寝ているはずがない。
そして、今まで守られてきた赤ずきんちゃんは周りに対する信用も厚かったかもしれない。
おばあさんの家で危険なことが起こるわけがない。
まるで、この家に来る前までの私みたいだ。
無条件に彼氏を信じて、愛情は変わらないはずと思い込んでいたほんの5分前までの私。
このセリフを言った後すぐにオオカミに丸呑みされてしまった赤ずきんと同じように、私の世界も急激な変化が起きている。
彼氏のベッドの上には彼氏ではない、女の子が眠っている。
顔は見えないけれど、長い髪の毛がゆったりと波打っている。
赤ずきんちゃんじゃない私は
「どうしてあなたの髪の毛は昨日と違って長いの」
なんて尋ねることはしない。
その上、ベッドに眠っている女の子という状況だけで、何が起こったのか正確に把握することだってできる。
泣くのは悔しいし、眠っている女の子を起こして責めるのは違う。
悪いのはこの子じゃなくて、浮気をした彼氏ただ1人だ。
ベッドには1人しかいないけれど、彼氏はどこにいるのか。トイレかお風呂かあるいは買い物にでているのか。
この子を責めるつもりはないけれど、浮気相手の眠りを見守ってられるほど鷹揚でもいられない。
我慢できずに身体の上の掛け布団ごとさわったその途端女の子が飛び起きた。
彼氏の顔だった。
長い髪はそのままで、顔だけ見慣れたものだから違和感が大きい。
「どうしてあなたの髪の毛は昨日と違って長いの」
赤ずきんちゃん、ごめんなさい。
私勘違いしてた。
人は大きな疑問を持つと深く考える前に尋ねずにはいられないものなんだね。
1/14/2024, 2:54:14 PM