泡沫夢幻

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暖風が丁寧に手入れされた長い黒髪をふわりなびかせる。静かな水音を立てながら気ままに流れてゆく川にのせられたつぼみを遠目に眺めながら、橋の柵に軽く腰を乗せてそっと息を吐いた。住宅街から離れた人目の少ないとある小さな川、平日の早朝に人がいるはずもなく。きらきらと眩しい太陽が散りかけの桜を照らす。まるで、宝石のように。透き通った花びらが綺麗で思わず見惚れてしまう。白い腕を伸ばして触れてみようとするけれども、柵から離れなければいけないほどの距離から手を振っている桜に触れれるわけがなくて。そっと腕をおろし、諦めに微笑んだ。

/ 風に身をまかせ

5/14/2024, 10:17:47 AM