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 遠い日の記憶

 記憶力悪いから昔の記憶とかさっぱりですわ。でも一つだけ明確に覚えている記憶がある。いや、今思い出そうとしたら結構あやふやだったわ。

 でも起きた出来事自体ははっきりと覚えている。あれはそう、私が小学生の頃の話です。ところでこの、あれはそう、で始める語り口ってなにが元ネタなんだろう。

 まぁそれはどうでもいいや。小学生の頃の帰り道で走馬灯を見たって話でね。なんでかは忘れたけどちょっと高い場所に登った時のことだ。

 あれは石垣っていうのかな。呼び方がちょっとわからないけど石の壁みたいのを登ってたんだけど途中で落ちちゃって。そこで走馬灯を見た。

 はっきりと時間の流れが遅くなったのを覚えている。幸い怪我はなかったけどあれは今までの人生で一度しか経験してない出来事だった。

 あの頃は昭和で俺は子どもだったからな。危ないことや法的にだめだろってことも平気でやっていた時代だった。

 しかしこうして文字に起こしてみると大したことのない出来事だな。俺にとっては一生忘れられない事件だったのだけど。

 でも他人の体験談なんてそんなものだよな。大抵はふーんで終わってしまうことだ。

 走馬灯を見た。それが俺の遠い日の記憶。それだけの話。

7/18/2024, 1:02:09 AM