風がさわさわと木の葉を揺らす。月の光が優しく男の顔を照らしてくれる。包帯でぐるぐる巻きになっているけれども、目や口だけは表に晒されていて、以前と同じようにほんのり色気を感じさせた。誰なのか思い出せないのにどこか懐かしいのはどうしてだろう。その全身は酷く爛れていて不気味なのに何故だか涙が込み上げてくる。男の唇が確かに己の名前を呼ぶ。お前は誰だ。俺の名前を知っている、得体の知れないお前は。月影に隠れてしまった男はもうそこにいない。
10/16/2024, 11:20:55 PM