14歳になった底辺

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古めかしい雑音の入ったカセットテープに雑音じゃない見覚えのある声が流れた。
一分間の雑音の後にようやく聞こえた声は息が荒く、気持ち悪い。犬のようだ。
その声は語り始めた。だが、聞いている私にはなにも情報が入ってこない。
カセットテープとは別の雑音が耳に鳴り響く。
私は踞って頭を抑えて呟いた。
「頭痛い」

今日は、一年前まで生きてた腐れ縁の命日だ。
別に、好きだった訳じゃないが、そいつとは十年以上の中だった。
今日まで、ヤツが死んだ事なんて忘れて人生を謳歌してやった。
ヤツはとにかく明るい奴だった。いつも俺にへばりついてきて離れなかった。
口下手で、寂しがり屋で、頭悪くて、勘違いが凄かった。
今日まで弔わずに過ごしてきた。墓にも葬式にも行かなかった。ずっと酒呑んでた。

「うっ...」

吐き気がする。なんでこんな嫌な事を態々考えないと生きていけない。

このカセットテープには、ヤツの声が入っている。
ヤツの遺言だ。ヤツは自殺しやがったのだ。
なんで自殺したのかはまだわかってない。いつも通りだったそれしか言えない。

俺に、相談してくれればよかったのに。ただそう思うだけだ。
これ以上思ったら自分が情けない。だって、そう思うなら自分から声かけて全力で自殺なんて止めればよかった。屹度この俺の有り様を見てるんだとしたら、アイツは苦笑いしてから、俺を慰めるだろう。

何かをずっと思って最終的に逃げてしまうほど辛かったのはお前だろと思うと更に虚しく、悔しさが残る。
ヤツと気を巡らせるみたいで鬱陶しい。もう居ないのに、こんなプライドを発揮して生きる。

まだ向き合えない。また来年。とてつもなく長く短い一年してからカセットテープを聞こう。


お題「さよならを言う前に」






8/20/2024, 2:46:17 PM