《星が溢れる》
この世界から灯りが消えた。
いや、街も獣も人も、ほとんど同様にだ。
大地が裂け、山が火を噴き、波が全てを呑み込んだ。それから先のことはよく覚えていない。
ただ確かなのは、この世界から明かりというものが綺麗さっぱり消え去ってしまったことだけ。
辛うじて生き延びた僕も、そろそろ同じ運命を辿るだろう。
必死に生き残りや食べる物を探して歩いたけれど、もう限界。夜露に濡れる草っぱらに崩れるように体を投げ出した。僕をここまで育て愛してくれた人たちの顔を思い出し、心の中で謝った。
最後の眠りにつこうと瞼を閉じかけた時、ふと夜空が眩しいことに気づく。
今日までずっと、足元の瓦礫を見下ろしながら歩いていたからか――いや、地上の灯りに溢れた世界でずっと生きてきたからか。
見上げた夜空は、今まで見たこともないほど明るかった。
澄み切った紺青の空に、無数の星光が瞬いていた。
白い星、黄色の星、青白く輝く星。その全てが燦々と煌めいて、暗闇の地上に灯りを届けている。
今まで僕の目には見えなかった小さな星たちが輝き、流れ落ちて、この世界にはっきりと存在を伝えていた。
こんなにも美しいものに抱かれて終わりを迎えられるなら、案外悪くない気分だ。
ゆっくりと、瞼を伏せる。僕の目からもまた、小さな輝きが溢れ出してきらきらと流れ落ちていった。
3/15/2026, 11:36:20 AM