いぐあな

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300字小説

トキメキの予感

 ホームに電車が滑り込んでくる。新しい制服を着た私は、サラリーマンの列に混じって乗り込んだ。今日からは電車通学。同じような制服の学生で車内は満員だ。
 とりあえず、咳と席の間の通路で吊革を掴んで立つ。電車が大きくカーブを曲がる。斜めになった床に不慣れな足がよろけた。
「危ねー」
 聞き慣れた声がして、肩を手が支える。
「あ、ありがとう」
 礼を言うと、また同じ学校に通うことになった幼馴染がにっと笑った。
「気を付けろよ」

 駅のホームに降りる。
「じゃあな」
 幼馴染が先に改札に向かう。ブレザー姿が妙に大人っぽくて、支えて貰った手は大きくて。
「……別に好きじゃないのに」
 ドキドキする。私は何故か熱くなった頬を手の甲で撫でた。

お題「好きじゃないのに」

3/25/2024, 11:46:48 AM