木蘭

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【未来】

「私、自分の未来を知りたいんです‼︎」

占い師という立場上、仕方がないとはわかっているが、ただ漠然と「未来を知りた」くて会いに来る人間がやたらと多すぎる。

特に最近、ある著名人からの依頼を受けたところ、「この人の占い、めちゃくちゃ当たる!」と依頼者自身がSNSに投稿したことでこのテの依頼が殺到してしまっているのだ。

「未来、といってもいろいろありますよね。仕事に関することや恋愛に関すること、あとご家庭に関することっていうのも。具体的には、どのようなことをご希望ですか?」

と、できるだけ占う範囲を絞ろうとしても

「とにかく自分がこれからどうなるか知りたいんです。人生、うまくいくのかダメになるのか、今のうちに知っておきたいんです」

という答えが返ってくる。要するに、自らの人生の行方をさっき会ったばかりの占い師に丸投げしようとしているにすぎないのだ。

「未来を知りたい、ですか。私の占いでは、残念ながらそれはできないですね」

「えっ⁈ どういうことですか」

「未来って、今の時点で決まってるもんじゃないんですよ。自分次第でいくらでも変えることができる。私の占いでできるのは、あなたが自分の未来をつくるお手伝いなんです」

「未来を…つくる?」

「はい。あなたが自分の運命のハンドルを握ることができれば、未来をつくることは可能です。私はその手助けとして占っているだけです」

「…私にも、運命のハンドルは握れるんですょうか」

どうやら、彼女は自分の人生を丸投げすることからは抜け出せそうだ。

「さぁ、一緒に未来をつくりましょうか」

ここから、私の本来の仕事が始まるのだ。

6/18/2023, 9:31:35 AM