六月の帰路

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鳳仙花がちらついた浴槽で、首を右側に預けた
水がいっぱいに詰まった浴槽で
それは心が息苦しいみたいに 髪から滴る体温が、なんでか人間みたいだった。
水の中では僕は少しだけ隠れられたみたいな気がした
この世は誰も知らないんじゃないかって
外から変な音がした気がしたけど 多分世界が今終わっても、僕は水に溶けるだけなのだろうね
そうやって浴槽にまた熱水がためられていく、僕の体積は縮こまって、このまま溺れてしまうまで いつまでか

少し冷たい雨が滴る 窓から見た空は、ただの絵画。
いつのまにか捨てられたペットボトルも汗をかいていた、まだ生きていたんだ、と思う。
僕は緑色の空気が見えるようになったと錯覚した。
それは多分、鳳仙花の空気、それか多分、鳳仙花が終わる合図だった。
バトンを落としてしまった時、それはそのままでいい、あの時の思い出は、捨ててしまえたと思っていたけれどね。
ただのブラウン管テレビに、東京が映って、どこかの国が生き生きとした声で綴られていた。
何かを言われているような気もした、でもやっぱりよく聞き取れずにそのまま捨てられたみたいに、汗を流して眠っている。

10/20/2022, 10:42:28 AM