にんげん

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乱れ咲く桜が眩しい。
新しい制服を纏った少年少女の姿を祝福するかのように、桜は誇り咲く。
私には、満開に咲く桜は、眩し過ぎる。別に嫌な思い出は無いけれど、私を皮肉っているかのように思えてくる。
新しい人生が始まる時と同時に、桜も咲き始める。だから嫌いなのだろうか。なんと言っても私は新しいことが嫌いだ。

反対に、散って行く桜は、言葉に言い表せない程好きだ。
桜色の花弁が、雨のように落花して行く様子は、正に私の様で親近感が湧くのだ。
落花した花弁は、地面に桜色の絨毯を敷き、人間に踏まれて色褪せる。
美しい桜が散った時、人間は一つ一つ美しい花弁を気付かずに、何事も無いように前だけを向き、歩んで行く。
かつて、咲き誇っていた桜の木もいつしか、何も無いただの色褪せた木と成る。

君が思っているより、桜はもっと儚いものなのかもしれない。数ヶ月で美しい姿が、失くなってしまう。
たまには、地面に敷かれた花弁の絨毯と何も無いただの色褪せた木を見てみるといい。思わぬ、出逢いがある。

人間も案外そういうものなのかもしれないな。

桜散る

4/17/2024, 12:46:09 PM