朝倉 ねり

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『タイムマシーン』

「母さんはなんでそんなシワとかシミだらけなんだよ!ババアだから友達に見せるの恥ずかしいよ……」
思春期、と世間で言われる時期に差し掛かった息子。
私の顔を見て、ウンザリした顔でそう言った。

とてもショックだった。
自分の顔を貶されたことよりも、息子が、私の大事な息子が、平然と人を傷つける言葉を吐くようになったことが何よりも辛かった。

貴方を育てるのにお金を使ってしまって、自分の美容に使う余裕が無かったのだと言っても貴方は納得しないのでしょう。
私が被害者ヅラをしている、とより嫌悪感を抱くだけなのでしょう。それか、そんなものは甘えだと言うのかもしれない。

ああ、貴方は若いのだ、息子よ。
貴方は若いから傷も直ぐに治るし、シワやシミのないハリのある肌なのだ。
貴方もいずれこうなる日がくる。
何十年か後、鏡で自分の顔を見た時、ヨボヨボの老人がそこには写っていることだろう。

そうして貴方は自分の生きてきた月日の長さを知る。

今の私と同じように傷つき、長かった人生を思い出し、過去の自分にスキンケアや体調管理をちゃんとしておくよう、タイムマシーンに乗って言いに行きたくなるのかもしれない。

けれど。
私にとってこのシワやシミは、誰がなんと言おうと大切なものなのだ。

「これはね、貴方を育ててきた証なのよ。貴方を産まずに、貴方を育てないまますぐに死んでいたら、こんなに老いることも無かったでしょう。この顔や手のシワは、貴方と共に生きてきた年月の長さなの。」
───大事な息子を、大切に育てるための等価交換に、私の人生が必要だったのよ。

1/23/2026, 12:56:20 AM