22時17分

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冬晴れ。

貴重な冬晴れに恵まれて、深々と降り積もる積雪量に待ったをかけた。
南アルプスのように、標高を白く着飾った自然の恵みたちは、久々に日光を浴びてどう思っただろう。
凍えゆく声無き声を発していたのか、悠然の等閑さに身を任せて身体を揺らす寸前だったか。

ペンギンと小アザラシは、久々に外の冬景色を探訪することにした。
きゅうー、と鳴き声とともに小アザラシが先導していて、その後に、ペタン、ペタンと黄色いカエデのような形をした足跡を、新雪に付けていく。
雪の妖精のように小アザラシは生き生きとしていて、冬の寒さなど感じている様子はない。そのままの姿でいる。一方ペンギンは、職務をする必要はないのに正装であると言っているような感じで、車掌帽に紺色の制服を着用していた。

二人が向かうのは洞窟だった。
特に行く宛もないが、久々の良い天気に恵まれた。
雪解け水の流れる小川を眺めていても良いだろうと天が言っている。二人以外誰もいない地域で、地域おこしでもするように新雪の感触を確かめたい、というのもあるかもしれない。

小アザラシは、ずるずると雪の上を這って進んで一本筋の太めなラインを描いている。スピードは玄関から出てきたときの子供。親代わりのペンギンは、途中まで並走していたが、足跡は分かれた。
ペンギンの足跡は、本来の道に沿って歩いているようだ。洞窟に向かうための道のり。
一方、小アザラシは大胆なショートカットをしている。
期間限定イベント。俯瞰してみればきっと、たこ焼きのように膨らんだコブの根元付近にあるくびれを突っ切っている。

本来この場所には清冽な湖があった気がした。
かつてはホタルがいた。数年前は小魚が暮らしていた。半年前は沼だ。
今は清濁併せ呑むような新雪が時代を凍らせている。
雪の下は氷だろう。その過程を、多分小アザラシは知らない。

「きゅー、きゅー」
「わかってる。待ってろ」

小アザラシは一足先に洞窟の入口に着いたようだ。
短いヒレを振り、ペンギンを待っている。
ペンギンは、ゆっくりとした足取りで楕円を描き、合流した。
冬の夕方は無いようなものだ。
日没前の帰り。
2人組は一緒に湖のショートカットをした。
無論、腹ばいで。

1/6/2025, 7:09:29 AM