『これで最後』
今日僕は死神を辞める予定だ。
最後に彼女の魂をとったら、もうこれで最後にする。
魂をとることが嫌になったわけじゃないけれどもうこれ以上魂をとる人たちの顔を見たくなかった。
皆、揃いに揃って生きることを諦めている人が多かった。ある人は“ 治らない病気だから”、またある人は“ 寿命だから”と死期を悟っている人が多くて僕が魂をとりに来たことを伝えても皆、笑顔になってこう言うのだ。
“ これでやっと死ねる”
死神の僕が言うのもおかしいかもしれないけれどその言葉を聞くのがもう辛くなった。
だから、これで最後にしようと思った。
僕は死神を辞めたらどこにいくのだろう。
きっと跡形もなく魂ごと消えるのだろう。
最後に彼女の笑顔を見ることができて良かった。
死神の僕には笑顔とは無縁だと思っていたから。
魂をとる人の中で心から笑えていた人は彼女だけだった。
もう魂をとった後だから彼女には届くことはないけれど。
もう一度会うことができたなら僕は彼女にこう伝えたい。
“ 最後まで笑っていてくれてありがとう”
彼女の笑顔があったから僕は死神を辞める決心がついた。
僕もこれでようやく魂をとるという呪縛から解放される。
だから、もうこれで僕は深い眠りにつくことにする。
5/27/2025, 12:57:10 PM