Lapisrazuri

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夏が過ぎ去り、秋へと移りゆく頃の風が僕の頬を優しく撫でる。

土曜日の街角広場には、子供達が駆け回り、道行く人達の笑い声が響き、優しい陽の光が差す。

向こうから、褐色のトレンチコートに身を包んで、洒落た小ぶりのバックを肩にかた綺麗な女の人が、黒いハイヒールを鳴らして歩いくる。

上品なサイズのフープピアスは歩く度に揺れ、褪せたルージュの唇がクールでアンニュイな人。

ただすれ違うだけだった。

懐かしい香りがほのかに僕の鼻を掠めた。

その時に風さえ吹かなければ、気づかなかったかもしれないと、少しだけ風を恨みたくなる。

大好きだったあの人の香りは、今でも胸のどこかに染み込んで、忘れられない。

_香水_

8/31/2023, 7:08:51 AM