たやは

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きらめき

きらめき、トキメキ、夢気分。
つまりは何が何だか分からないってことだ。

今、私はパリコレのオーディションを受けている。これで3社目。本当になんで。私だって分からない。
確かに私は小さなモデル事務所に所属している。でも、何年も泣かず飛ばす状態だった。東京のオーディションだって受けたことがないのにパリコレって頭のおかしい奴だと思われてもしかたがない。

友達の代わりにオーディションを受けたとか、テレビの企画だったとかなら良かったかもしれない。でも違う。今回は自分でオーディションに申し込んだ。パリ1人旅の思い出になればと思っただけ。オーディションを受けさせてくれるなんて思ってもいなかった。

凱旋門の近くにあるカフェの壁に張ってあった広告がパリコレの募集広告だった。さすがはパリ。こんなところにモデル募集、それもパリコレモデルのオーディション広告があるなんて。
広告のQRコードから申し込んで会場に行きオーディションを受けたが見事に落ちた。あたり前だ。隣を歩くフランス人は身長は高く、手も足も首も長い。エイリアンかと思うほどの8頭身以上のスタイル。落ちるに決まっている。

それなのに、会場のスタッフに声をかけられ、2社目のオーディションを受けることになった。英語はかたこと、フランス語は全く分からないから詐欺かと思ったが、指定された場所はオーディション会場だった。まあこれも落ちた。聞いたこともないブランドというかメーカー?のオーディションだったが、英語を要約すれば「あなたはコンセプトに合わない」たった。コンセプト?そんなものがあったのか。

そして懲りずに3社目。また同じスタッフに声をかけられオーディション会場に向かった。さすがに「合格」なんてことはなく落ちた。なんか清々しさを感じる。
でもあのスタッフの人は、何で私に2回もオーディションを勧めたのだろうか?
私を見ても「東洋の神秘」なんて微塵も感じないし、フランス人のような華もない。

ただの思い出作りとしてはとっても楽しかったが、真剣にパリコレを目指す人とは気持ちの在り方が違ったのかもしれない。私も始めは軽い気持ちだったが、3社目は売れないモデルとしてのプライドと意地を見せたつもりだ。合格はできなくも2次審査くらいは通過したかったが、現実は甘くないか。まあ、楽しい思い出になったから好しとする。 

オーディションからの帰り道、あのスタッフがまた声をかけてきた。

「あなたなら受かると思ったけど見る目ないはね。あの人たち。あなたもそれで隠しているつもり。ふ〜ん。あなた純粋な人類ではないでしょ。」

私の顔はみるみる青ざめていく。何この人。頭がおかしい人?

「怖い顔してるわよ。大丈夫。私しか気がついてないわ。どうしてって、顔ねぇ。
簡単よ。私も同じだから。同じ仲間に会うのは久しぶりだから楽しくって。また会いましょう。パリコレのステージで」

そう。あのフランス人モデルがエイリアンではない。

エイリアンは私だ。

9/4/2024, 9:06:15 PM