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雨の香り、涙の跡


雨水が滲みた土の香りの懐かしさで目が覚める。
いい香りかと言われれば、そうではないけれど。
懐かしい、幼い頃の記憶を呼び覚ますような
心地よい香り。

サアァ——っと、軽やかな音が聞こえ始める。
草が濡れ、花が濡れ、木々が濡れていく。

雨音に遮断された世界。
ここだけ、あの頃に戻ったみたいに。

けれど、この伸びた背丈は縮むことなく。
賑やかだったこの家に、自分以外の人間が戻ることもない。

頬に触れる、ざらりとしたい草が濡れる。


ここに雨は降らないはずなのに。

6/19/2025, 10:58:30 AM