はじめ

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【届かぬ想い】

「ふう」
ため息をつくと、隣で弁当を食べていた奴がこちらを見る。
「どうした、まるで青少年の悩みのようなため息をついて」
「まあ、俺ら10代後半は青少年と言って良い年頃だけど」
言って、自分もお握りを口にする。梅干し。酸っぱい。奴はいっぱいにした口の中身を咀嚼して、飲み込んで、またこちらに向いて、
「聞いてやってもいいぞ、悩み」
「いらねー」
「即答なんてひどい!泣いちゃう俺様ぐすぐす」
わざとらしい泣き真似。阿保な言動をしながらも、失われない美貌。さらさらの髪は、光のように輝く。
(綺麗)
見ていると、奴は視線に気付いたか顔を上げて、ニヤリと笑う。
「俺に惚れた?」
「……な訳ないだろ馬鹿」
(好きすぎて)
お握りの梅干しのせいにして、顔をしかめる。
(伝えてはならない想い)
「……酸っぱい」


4/16/2024, 6:52:54 AM