NoName

Open App

好き嫌いをカテゴライズする事に関して、僕の右に出るものはそうそう居ないだろう。人間とは実に多面的で曖昧な生き物だ。知的生命体と自然界においては稀有な己の知性を誇る一方で、獣同然に成り下がる事もある。どれだけの主義主張を声高に訴えた所で、その優劣は情勢や背景、人徳によって左右される。好き嫌いもそうさ。あれだけ好きだ好きだと宣っていたのに目を瞑りさえすれば見えない様な失敗でコロッと態度を変えたり、さんざ嫌いだと喚いていたものに少し指先が触れただけで惚れ込んでしまう事もある。

ああ、何て軟弱な。全く嘆かわしい。

その点僕は随分分かりやすくて良いぞ。人は皆僕を我儘だ意固地だと指差して笑うが、自身が生物として僕に劣っていると無意識下の自覚があるからこそ、そうして僕を笑う事しか出来ないのさ。まともに顔を突き合わせて話したって鼻っ柱を叩き折られる事は明白だからね!だから誰も僕と話したがらない。僕の目の届かない所でこそこそと身を丸め、嘲笑を交えて囁くことしか出来ない。ちょっと遊んでやろうと目を向ければ鳩のように飛び去ってしまう。いや、滑稽滑稽。

6/12/2024, 1:32:01 PM