テツオ

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僕のトイレはいつも赤い。

便座を下げ、洗浄レバーを指でひいた。
夕暮れみたく染まった、個室をあとにする。
これは僕のはやとちりだと思うが、ファミレスのトイレにある照明大体がいつも、砂漠の砂そっくりな、目に落ち着かない色をしている。

「あっ、ゆうくーん!やっと戻ってきた!」

サッパリした手と腸内に響く、更にサッパリした明子の声。と、ガヤガヤ、ファミレス店内。
明子とは、大学時代からの友人だ。
顔がクッキリしていて、眉が太め、スタイルに関しては、詳しく見たことがないので特筆できない。多分、そこそこではあると思う。

明子は、ソファからさわやかな笑顔を覗かせて、僕へ手をチョイッチョイッとこまねいている。

テーブルを見ると、もう料理が来ていて、明子のオムライスはどこも欠けておらず、しかし湯気は、でていない。
少し責任を感じる。

「よしじゃ、食べよ!いただきまーす」

白い手を合掌し、明子は元気よくスプーンを握る。
僕は明子がいただきますと言って初めて、慌てて合掌し、指の間に挟まっていたフォークがテーブルに落ちてしまった。

焦ったが、明子は目も向けず、オムライスを頬張って、ゆっくり顔をゆるませている。
僕もサラダうどんを巻いた。

「……ドリンク入れてこようか」
「一緒に行ってもいい?」

明子と目が合う。
にこやかに僕を見つめていた。断る理由はないが、なにか胸騒ぎがする。

「あのさー」

明子の後ろをついていっていると、なんの脈略もなく、明子が声を上げた。
綺麗なうなじから繋がる小さな顔は、変わらず前を向いている。

「今、私のことすき?」

彼女の震える手が見えた。

僕は、カッコつけたかったのか、弱々しい彼女の手を自分の手に重ねて、握る。
明子はすぐ振り向いて、あの明子の泣きそうな顔を、僕は見た。

1/26/2024, 11:23:58 AM