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貴女の笑顔も、涙も、怒りも
どんな表情も、大好きで、受け止めたかった
貴女にとってそれらをぶつけられる存在になりたかった

「私、好きな人が居るんだよね」
「そうなんだ?どんな人」
「うーん、素敵な人?」

僕じゃないんだなぁって勝手に振られた気分になっちゃって
いっそ貴女のそばにいられるならと
貴女の惚気を、恋物語を聞いていた。

「とにかく度を超えて優しい人でね、面白くて、」
溢れるように言葉を続ける貴女の顔は
それこそ乙女の顔で、一番可愛い。
「それは素敵な人なんだね、貴女にぴったりだと思う」
「そうかな…」
そう言って少し俯きがちになる
「なにか、不安なことでもあるの?」
「んーん、私なんかがなんて思っちゃったり」
「そんなに素敵なのに?」
貴女は目を丸くした
これが僕の本心で、貴女への気持ちなんです。

貴女と出会って3度目の冬
「体調、良くなるかな」
「日頃の行いが良いからすぐ良くなるよ」
「そうかな…」
貴女はまた俯いた
「僕、貴女のことずっと好きでした」
「え…?」
「だから、良くなったら返事くださいね」
「わ、私…」

僕は逃げるようにその場を後にした
なにか言おうとした彼女の言葉を遮るように
僕じゃないという現実を先延ばしにするように

「私ね…」
あれからしばらく経っても、まだ辛そうな貴女
やせ細り、あの時の笑顔も涙も、怒りもないような
何かが抜け落ちてしまったような貴女
「もう良くならないみたい」
か細い声でそう告げた
「だからね、私この前のお返事をしなきゃと思ったの」
生唾を呑む
「…ごめんなさい」
彼女の瞳が潤んでいく
皆まで言わないでくれと思ったり、最後まで聞きたいと思ったり
「私も、ずっと好きでした」
「…は?」
「ずっと…私なんかって思って、言えなくて」
「ずっとそばに居てくれて、私を肯定してくれてありがとう、貴方はとっても優しくて、面白くて、私にとってかけがえのない存在だった」
「…ぼ、僕」
「なかなか伝えられなくて、ごめんなさい。好きになって…ごめんなさい。」
そんな、やめてよ、冗談は
僕の大好きな人に、謝らせないで
僕の、愛する人の好きを、呪いに…しないで欲しかった。

これからも、貴女だけを愛し続けます
だからどうか、僕が逝くまで、待ってて。
僕の方こそごめんね、気付いてあげられなくて。



【ごめんね】



あとがき


2人はずっと、両片思いだった。その想いを伝えるのが遅かったが為に、お互いがお互いと自分を苦しめる呪いになってしまった。
でもこれが本当の愛と呼べるのかもしれませんね。

5/29/2024, 3:02:17 PM